『坊っちゃん』紹介と感想:歯切れのよい語りの魅力
『坊っちゃん』では、東京育ちの青年が地方の中学校へ赴任し、同僚や生徒との衝突を語る。歯切れのよい一人称に引っ張られて読めるが、その勢いに少し立ち止まると、人との距離の測り方も気になってくる。主人公は迷いを長々と説明せず、腹が立てば腹が立ったと語る。その速度に乗ると、こちらも出来事を即座に判断したくなる。けれども、彼の断言がすべて公平かと考えると、首をかしげるところもある。読みやすさは内容の単純さではなく、語る人物の強烈な調子から生まれている。勢いを味わいながら、その勢いに隠れた思い込みも拾いたい。痛快な筋を楽しんだ後で、語り手の判断を一つずつ考え直す余地もある。まっすぐに生きることの魅力と、それだけでは渡れない世間の複雑さが、ともに残る小説だった。