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『草枕』紹介と感想:風景を言葉で描く楽しみ

作品:草枕作者:夏目漱石投稿日:

『草枕』は、画工が山あいの温泉場を訪れ、人や風景を芸術の側から眺めようとする小説だ。出来事の多さより、眺め方が少しずつ変わる過程に魅力がある。旅の静けさの中にも、人の感情は入り込んでくる。山道や宿の気配は、物の配置だけでなく、音や温度の感じまで伴って伝わってくる。画工が絵を考える小説でありながら、読む側は言葉でしか出会えない風景を味わっている。そのずれが面白い。ひとつの眺めが詩や絵への連想に開かれると、歩く速度まで遅くなるようだ。筋を先へ追うより、目がどこで止まったかを確かめながら読む時間が楽しかった。美しく眺めれば苦しさから離れられるのか、離れたままで人を理解できるのか。風景の描写を楽しみつつ、その二つの問いが行き来する時間を味わいたい作品だ。