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『刺青』紹介と感想:蜘蛛の図柄を眺める

作品:刺青作者:谷崎潤一郎投稿日:

『刺青』は、刺青師の清吉が若い女の背に蜘蛛を彫る短編だ。美を作り出す者の欲望と、作品を刻まれる者の変化が結びつき、短い物語の中で二人の力関係が大きく動いていく。蜘蛛は背中を飾る模様でありながら、相手を捕らえる力を連想させる。清吉が選んだ図柄が、のちの関係の変化を先取りするように見える点が面白い。自分の欲望を託したはずの絵が、自分に向かって作用するようになるのだ。象徴の意味を一つに決めるより、彫る前と後で図柄の印象がどう変わるかを比べたい。描かれたものが人物の立場まで動かしてしまう。美しいものができたという結果だけでは、この関係を受け止め切れない。見る者と見られる者、作る者と作られる者の立場が揺れる過程に、甘美さと落ち着かなさが同居している。