『羅生門』紹介と感想:雨と門がつくる出発点
『羅生門』は、荒れ果てた都で行き場を失った下人が、門の上で老婆に出会う短編だ。生きるために何をするかという迷いが、相手の言葉をきっかけに行動へ変わる過程を鋭く描いている。雨を避ける下人には、これから向かう先がない。門は移動のための場所なのに、彼はそこで立ち止まっている。この配置だけで、暮らしの足場を失った状態が伝わってくる。暗さや荒廃の描写を単なる雰囲気としてではなく、選べる道が減っていく感覚として読むと、冒頭の重さが増す。判断力を試される前に、すでに身体が追い詰められている点を忘れたくない。下人の変化を遠い時代の出来事として眺めていると、自分の判断にも似た身勝手さがないかと問い返される。短さの中に、環境と言葉が倫理を動かす怖さが詰まっている。