『羅生門』紹介と感想:闇へ向かう足取り
『羅生門』は、荒れ果てた都で行き場を失った下人が、門の上で老婆に出会う短編だ。生きるために何をするかという迷いが、相手の言葉をきっかけに行動へ変わる過程を鋭く描いている。結末では、下人がどんな人間として生き続けるのかを詳しく教えられない。そのため、行動の一瞬が読後にも開いたまま残る。迷いを脱したことは確かでも、それを成長や解放と呼べるかは別問題だ。動けるようになること自体を肯定しない終わり方が印象的だった。闇は未来の不明さであるとともに、理由を得た人間がどこまで行くのかわからない怖さにも感じられる。下人の変化を遠い時代の出来事として眺めていると、自分の判断にも似た身勝手さがないかと問い返される。短さの中に、環境と言葉が倫理を動かす怖さが詰まっている。