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『山椒大夫』紹介と感想:支配が日常になる場所

作品:山椒大夫作者:森鴎外投稿日:

『山椒大夫』は、旅の途中で母と引き離され、過酷な境遇に置かれる安寿と厨子王の物語だ。昔話のような遠さを持ちながら、家族の結びつきと人を支配する仕組みを、読者の近くへ引き寄せる。山椒大夫のもとでの生活では、人が自由に去れないことが日々の労働と結びついている。暴力が特別な事件としてだけではなく、暮らしの前提になっている点が重い。何をしても元の立場へ戻される環境では、希望を持つこと自体に力がいる。物語の悪役を一人責めるだけでなく、その支配が続く条件へ目を向けると、題名の人物が持つ意味も広がって見える。再会や救出だけを追うと、その途中で失われた時間が薄れてしまう。物語が前へ進んでも取り戻せないものに注意を向けると、結末の温かさと悲しさをともに受け止められる。