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『にごりえ』紹介と感想:お力の声の明るさ

作品:にごりえ作者:樋口一葉投稿日:

『にごりえ』は、銘酒屋で働くお力を中心に、恋情と暮らしの行き詰まりを描く短編だ。客とのやり取りの明るさの奥に、本人にも簡単には説明できない疲れや孤独が沈んでいる。お力の受け答えは人を引きつけるが、その調子がそのまま心の状態を示しているとは限らない。人前で必要とされる明るさと、一人のときの気分は違っていてもよいはずだ。その差が見えると、会話の巧みさにも働く人の負担が感じられる。悲しみを直接語る場面だけでなく、うまく場を回している場面こそ注意して読みたい。声の華やかさの裏にある時間が気にかかった。お力を悲劇の象徴として遠ざけず、働き、話し、日々をやり過ごす一人として読みたい。にぎやかな表面から深い淀みへ近づく文章が、読み終えたあとも耳に残る。