日本文学ブログ

『十三夜』紹介と感想:実家で語るお関の苦しさ

作品:十三夜作者:樋口一葉投稿日:

『十三夜』は、嫁ぎ先で苦しむお関が実家を訪れ、帰り道でかつて縁のあった男性と出会う短編だ。短い夜の中に、結婚、家族、選ばれなかった人生の気配が凝縮されている。お関が実家へ来る場面には、ここなら自分の話を聞いてもらえるという期待が感じられる。ところが家族の事情も絡み、話は本人の苦しみだけで決まらない。身近な人が味方であることと、自分の望む選択を支えてくれることは違うのだ。そのずれが、よその家の話より痛く感じられる。言葉を尽くすほど身動きの取れなさが見えてくる会話が印象に残った。別の道を想像できても、そこへ今から移れるとは限らない。夜の会話を追うと、諦めという一語では言い表せない、生活を背負った人同士の近さと遠さが残る。