『地獄変』紹介と感想:語り手を信じ切れない面白さ
『地獄変』は、絵師の良秀が地獄の屏風絵を制作する過程を描く短編だ。芸術への執着に権力者の意向と娘の存在が絡み、美のために何が行われるのかという問いが鋭く迫る。物語を伝える人物は、大殿に近い立場から良秀を見る。そのため評判や弁明の言葉には偏りがある。読者は語られた内容を知るだけでなく、語り手自身が何を見たくないのかも考えることになる。説明を重ねるほど隠し切れないものが浮かぶ構造が巧みだ。文章の表面では誰が非難されているか、その一段下で誰の力が示されているかを比べる読み方が面白かった。完成した絵を称賛する言葉と、その前で起きた苦痛を切り離すことができない。芸術の力を感じるほど、その力を支えた関係へ視線を戻される、読む側にも厳しい作品だ。