『注文の多い料理店』紹介と感想:題名に仕掛けられた二つの意味
『注文の多い料理店』では、猟に来た二人の紳士が山中で不思議な店に入り、次々と掲示された指示に従う。軽快な会話で進む童話だが、客だと思っていた立場が揺れるにつれて怖さが増していく。料理店での注文といえば、客が食べたいものを伝える行為を思い浮かべる。しかし、この店では客の側に指示が積み重なっていく。題名の言葉は変わらないのに、誰が誰へ求めるのかが反転するのだ。初めから目の前にあった仕掛けに後で気づく楽しさがある。読み返すと、怖さは突然加わったものではなく、親しみやすい言葉の中に潜んでいたとわかる。同じ言葉でも、自分に都合のよい意味で読めば危険に気づけない。二人の勘違いに笑いながら、読む自分にも似た思い込みがあることを感じる、よくできた短い物語だ。