『注文の多い料理店』紹介と感想:紳士たちの都合のよい解釈
『注文の多い料理店』では、猟に来た二人の紳士が山中で不思議な店に入り、次々と掲示された指示に従う。軽快な会話で進む童話だが、客だと思っていた立場が揺れるにつれて怖さが増していく。二人は不審な指示にも、自分が歓迎されているはずだという前提で理由をつける。情報がないから間違うのではなく、見たい形に情報を整えてしまうのだ。そのやり取りは可笑しいが、確信が強いほど気づきが遅れる怖さもある。二人で話すことで判断が正されるとは限らず、同じ思い込みを補強し合う場合もある。会話の軽さが、危険への歩みをかえって滑らかにしている。同じ言葉でも、自分に都合のよい意味で読めば危険に気づけない。二人の勘違いに笑いながら、読む自分にも似た思い込みがあることを感じる、よくできた短い物語だ。