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『やまなし』紹介と感想:十二月に届く恵み

作品:やまなし作者:宮沢賢治投稿日:

『やまなし』は、川底に暮らす蟹の親子の世界を、五月と十二月の二つの場面で描く童話だ。水の光や泡の動きが鮮やかで、人間の目線を離れて流れの中へ入るような読書になる。十二月には、水の中へ落ちてくるものが違う意味を帯びる。上から来るものは危険だけではなく、香りや楽しみをもたらすこともあるのだ。二つの季節を並べることで、同じ場所が恐れと期待の両方を持つとわかる。自然を優しいとも残酷とも一言で決められないところが好きだ。待つ時間まで含めて描かれるため、恵みは一瞬のご褒美ではなく暮らしの中へ広がっていく。言葉の意味をすべて確定しなくても、音や色の変化から感じ取れるものがある。短い二枚の景色を往復すると、水の中の小さな世界が、命の不安と恵みをともに抱えているとわかる。