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『やまなし』紹介と感想:二つの季節を並べる構成

作品:やまなし作者:宮沢賢治投稿日:

『やまなし』は、川底に暮らす蟹の親子の世界を、五月と十二月の二つの場面で描く童話だ。水の光や泡の動きが鮮やかで、人間の目線を離れて流れの中へ入るような読書になる。大きな冒険を描かず、二つの時期を置くだけで、川の世界に奥行きが生まれる。間にある月日は直接書かれていないのに、蟹たちが生き続けていることを想像できる。対照を探すだけでなく、変わらずそこにある水や家族にも目を向けたい。変化と持続を同時に感じられるから、短編の終わりの先にも川が流れているように思える。余白が時間を大きくしている。言葉の意味をすべて確定しなくても、音や色の変化から感じ取れるものがある。短い二枚の景色を往復すると、水の中の小さな世界が、命の不安と恵みをともに抱えているとわかる。