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『高野聖』紹介と感想:水の場面の安らぎと不安

作品:高野聖作者:泉鏡花投稿日:

『高野聖』は、旅の僧が山中で経験した不思議な出来事を語る小説だ。険しい道の身体感覚から妖しい家の気配へ進み、現実の旅と怪異の境目が次第に曖昧になっていく。水に触れる場面には、旅で傷んだ身体がほどけるような心地よさがある。けれども、安心して身を任せることが、同時に警戒を解くことにもつながる。気持ちのよさと怖さを別々にせず、同じ感覚の中に重ねる描き方が鮮やかだ。読者も安堵しながら、その安堵が危険へ近づくのではないかと思う。身体の感触が物語の緊張を動かしていることを実感した。怪異の正体を整理するだけでは、読むときの湿度や不安は捉え切れない。語られる話に耳を傾ける姿勢で読むと、山の外へ戻っても消えない夢のような余韻が残る。