日本文学ブログ

『雪国』紹介と感想:葉子の印象の鮮烈さ

作品:雪国作者:川端康成投稿日:

『雪国』は、雪深い温泉地を訪れる島村と、そこで生きる駒子や葉子との関係を描く小説だ。風景と人の姿が鋭く結びつく一方、眺める者と暮らす者の距離がつねに気にかかる。葉子は島村の視線の中で、声や表情の印象が強く残る人物だ。詳しく理解する前に鮮やかな像として心へ入ってくる。その描き方に惹かれる一方、印象の強さと人物への理解は別だとも感じた。読者も島村と同じように、美しい断片から相手全体を想像しているのかもしれない。何が語られ、何が見えないままなのかを意識すると、作品の余白が深くなる。美しい描写へ惹かれたあとで、その美を誰の視線から見ていたのかを考えたくなる。雪景色の静けさと、そこで生きる人の熱が溶け合い切らないところに強い余韻がある。