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『博士の愛した数式』紹介と感想:数字が会話の入口になる

作品:博士の愛した数式作者:小川洋子投稿日:

『博士の愛した数式』は、新しい記憶が長く続かない数学者と、家政婦、その息子の交流を描く小説だ。数は難しい問題としてだけでなく、人と人が言葉を交わすきっかけとして現れる。博士は身近な数字から話を始める。それは知識を試す質問というより、自分の親しんだ世界へ相手を迎える方法のように感じられる。数字をきっかけにすると、何を話せばよいかわからない関係にも道ができるのだ。会話は共通点が最初からある人同士だけのものではない。相手が大切にしているものへ少し近づくことで、日常の挨拶にも別の可能性が生まれると感じた。一緒に過ごしたことを同じように覚えていなくても、その時間の価値までなくなるわけではない。数の美しさと日々の気遣いが結びつき、関係を続けることの意味を静かに考えさせる。(作品情報:新潮社