『推し、燃ゆ』紹介と感想:日常の動作の難しさ
『推し、燃ゆ』は、アイドルを推すことを生活の支えにするあかりの物語だ。推しをめぐる騒動が、その人のニュースにとどまらず、応援する側の日常の足場まで揺らしていく。あかりの生活では、周囲が簡単にできると思う動作にも重さがある。本人の意欲を外から推測するだけでは、その重さは理解しにくい。作品は身体の感覚を近くから描くことで、努力が足りないという説明に収まらない日常を見せる。診断名や性格の札で整理せず、何にどれだけ力が必要かを読むことが大切に思えた。小さな動作の描写が、人を見る基準を揺さぶる。好きなものがあることを単純に幸福とも逃避とも決められない。あかりの身体感覚に付き合うと、人が一日を生きるために何を必要としているかを、外から測る難しさが残る。(作品情報:河出書房新社)