『推し、燃ゆ』紹介と感想:家族との言葉のすれ違い
『推し、燃ゆ』は、アイドルを推すことを生活の支えにするあかりの物語だ。推しをめぐる騒動が、その人のニュースにとどまらず、応援する側の日常の足場まで揺らしていく。家族は近くにいるから理解できるとは限らない。将来を心配する言葉が、現在の一日をやり過ごす難しさへ届かないこともある。会話を読むと、同じ生活の中に異なる時間感覚があるように感じられる。正しい助言であるかより、その言葉を今受け取れる状態なのかが問題になるのだ。あかりだけでも家族だけでもない場所に立とうとすると、すれ違いの深さが見えてくる。好きなものがあることを単純に幸福とも逃避とも決められない。あかりの身体感覚に付き合うと、人が一日を生きるために何を必要としているかを、外から測る難しさが残る。(作品情報:河出書房新社)