『羊をめぐる冒険』紹介と感想:日常に入り込む不可解な依頼
『羊をめぐる冒険』は、ある羊を探すことになった「僕」が、北海道へ向かう長編だ。日常の仕事や会話の延長に不可解な要求が入り込み、探索が進むにつれて友人や自分の過去の意味も変わっていく。初めは身近な仕事の世界にいるのに、要求されることが少しずつ普通の範囲を外れていく。その移り方が滑らかなので、読者も主人公と一緒に奇妙な筋へ進んでしまう。現実と幻想を明確な門で分けないところが面白い。手続きや交渉の言葉が残っているほど、不思議なことも妙に現実味を帯びる。日常の仕組みそのものに未知の力が潜んでいるように感じられた。謎を解く楽しさと、失われた関係をたどる寂しさが同じ旅に流れている。すべてを記号の答えに置き換えず、道中の物や会話の感触を残して読むと、長い余韻を味わえる。(作品情報:講談社)