『羊をめぐる冒険』紹介と感想:羊の意味を決め過ぎない
『羊をめぐる冒険』は、ある羊を探すことになった「僕」が、北海道へ向かう長編だ。日常の仕事や会話の延長に不可解な要求が入り込み、探索が進むにつれて友人や自分の過去の意味も変わっていく。羊には、人の意志を越えて働く力を読むこともできる。ただ、一つの象徴の答えへ固定すると、物語の不気味さが小さくなるように思う。何を意味するかと同時に、人物へどのように作用するかを見る方が面白い。選択や抵抗の場面を追うと、外から動かされることと自分で決めることの境界が気になる。説明し切れない存在が、人間の側の問題を照らしている。謎を解く楽しさと、失われた関係をたどる寂しさが同じ旅に流れている。すべてを記号の答えに置き換えず、道中の物や会話の感触を残して読むと、長い余韻を味わえる。(作品情報:講談社)