文学と、日々のあいだ。

日本文学ブログ

日本の近代から現代までの文学作品を紹介し、さまざまな観点から感想を綴るテキストオンリーのブログです。

『推し、燃ゆ』紹介と感想:情報を読み続ける時間

作品:推し、燃ゆ作者:宇佐見りん投稿日:

推しの言葉や動きを細かく読み解く行為には、知りたいという喜びと、見失いたくないという緊張がある。情報が多くても本人へ直接近づけるとは限らず、解釈は終わらない。その時間があかりに秩序を与える一方、生活を占めてもいく。読むという行為が支えと負担の両方になる点が印象…

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『伊豆の踊子』紹介と感想:旅をする学生の孤独

作品:伊豆の踊子作者:川端康成投稿日:

学生は一人で歩いているが、その孤独は単に同行者がいないことだけではない。自分を人から隔たった存在と感じる気分があり、一行との出会いがそこへ働きかける。風景が変わるだけでなく、人との関係が変わることで旅の意味も動くのだ。初めの足取りと、誰かと話しながら進む足取り…

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『三四郎』紹介と感想:美禰子の言葉と三四郎の理解

作品:三四郎作者:夏目漱石投稿日:

美禰子の言葉を、三四郎は何度も自分なりに受け止めようとする。けれども、相手が何を感じているかを一つの答えにできない。そこに恋愛のときめきだけでなく、他者を理解する難しさがある。美禰子を謎めいた女性という札で整理するより、三四郎に見える範囲の狭さへ注目したい。わ…

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『刺青』読書感想

作品:刺青作者:谷崎潤一郎投稿日:

美と残酷が絡み合う初期谷崎の光芒。絵師清吉が若い女の背に刺す蜘蛛の女の意匠は、肉体と意志の反転をもたらす儀式のようだ。男は創造の名で支配を試みるが、刺青を受けた女の眼差しに立場は逆転する。性の力学を怪異の美で包み、恐れを快楽へ変換する手つき…

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『やまなし』紹介と感想:五月の景色に走る緊張

作品:やまなし作者:宮沢賢治投稿日:

五月の場面では、きらめく水の美しさと、命が脅かされる瞬間が近くにある。自然はきれいだから安全なのではない、と川底の視点が教えるようだ。急な動きに驚く蟹たちと一緒に読むと、風景が生き物同士の関係として立ち上がる。怖さを長く説明せず、見えるものの変化で示すため、読…

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『吾輩は猫である』紹介と感想:猫の目で眺める人間社会

作品:吾輩は猫である作者:夏目漱石投稿日:

猫という語り手は、先生の権威にも客の肩書にも素直には従わない。人間なら遠慮してしまう場面を平然と眺め、その振る舞いを勝手に説明する。この無遠慮さが、立派そうな議論の中に潜む見栄を見えやすくしている。ただ、猫もまた知識を誇り、相手を見下す。批評する側まで笑いの対…

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『三四郎』紹介と感想:東京へ来た青年の視界

作品:三四郎作者:夏目漱石投稿日:

三四郎の東京は、地名を知れば把握できる場所ではない。人の話す調子や距離の取り方までが、慣れた世界とは違っている。読者も彼と一緒に、その場の意味をつかみ損ねることがある。都会の広さを建物の大きさだけでなく、読み取れない人間関係として表すところが面白い。知らない場…

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『羅生門』紹介と感想:老婆を見たときの正義感

作品:羅生門作者:芥川龍之介投稿日:

下人が老婆の行為に怒る場面では、それまでの迷いが一時的に消えたように見える。他人の悪を目にすると、自分の立場が急にはっきりするのだろう。しかし、その正義感がどれほど安定したものかは、後の展開で揺さぶられる。怒りの強さが倫理の確かさを保証しないところが怖い。相手…

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『刺青』紹介と感想:蜘蛛の図柄を眺める

作品:刺青作者:谷崎潤一郎投稿日:

蜘蛛は背中を飾る模様でありながら、相手を捕らえる力を連想させる。清吉が選んだ図柄が、のちの関係の変化を先取りするように見える点が面白い。自分の欲望を託したはずの絵が、自分に向かって作用するようになるのだ。象徴の意味を一つに決めるより、彫る前と後で図柄の印象がど…

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『こころ』紹介と感想:告白を読むという経験

作品:こころ作者:夏目漱石投稿日:

先生の長い告白は、それまで見えなかった過去を照らす。ただ、本人が誠実に語ろうとしていても、記憶は一人の視点で並べ直される。読んでいるこちらは説明を受け取る側に置かれ、反対の声を直接聞けない。その構造を意識すると、告白の迫力は弱まるどころか増してくる。人が自分の…

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