文学と、日々のあいだ。

日本文学ブログ

日本の近代から現代までの文学作品を紹介し、さまざまな観点から感想を綴るテキストオンリーのブログです。

『たけくらべ』紹介と感想:町のにぎわいから入る

作品:たけくらべ作者:樋口一葉投稿日:

物語の町は、人物の後ろに置かれた背景ではない。通りのにぎわいや人の評判が、子どもたちの遊び方や立場にも入り込んでいる。誰がどの家の子かを皆が知っている場所では、自由なように見える毎日にも見えない境界がある。まず町の音を聞くように読んでみると、個人の気持ちだけで…

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『博士の愛した数式』紹介と感想:覚えている側の時間

作品:博士の愛した数式作者:小川洋子投稿日:

記憶の続き方が違う三人には、同じ一日が同じようには積み重ならない。家政婦にとって昨日の続きでも、博士には改めて始める関係になる。その繰り返しには切なさがあるが、相手に合わせ直す細かな工夫もある。覚えてもらえることを関係の唯一の証しにしない姿勢が心に残った。時間…

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『舟を編む』紹介と感想:西岡との違いが生む協働

作品:舟を編む作者:三浦しをん投稿日:

馬締と西岡は得意なことや人との接し方が違う。その違いが最初は距離になっても、同じ仕事に関わることで互いの必要性が見えてくる。似た者同士でなくても、相手にできることを認めれば一緒に進めるのだ。明るく振る舞う人物にも思いがあり、黙って働く人物だけが誠実なのではない…

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『舟を編む』紹介と感想:言葉の意味を説明する難しさ

作品:舟を編む作者:三浦しをん投稿日:

知っている言葉でも、短く正確に説明しようとすると途端に難しくなる。辞書作りの場面は、その難しさを仕事の具体的な手順として見せる。自分には当然の意味が、誰にでも同じように伝わるとは限らないのだ。定義を考えることが、相手のわからなさを想像する行為にもなっている。普…

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『羅生門』紹介と感想:生きるためという説明

作品:羅生門作者:芥川龍之介投稿日:

老婆の説明は、極限状態の切実さを伝えると同時に、自分の行為を認めさせようとする言葉でもある。下人はそれを聞き、思いがけない使い方をする。理由を理解することが相手への共感に向かわず、同じ理由で相手を傷つける口実になる。この転用の速さにぞっとした。説得力のある言葉…

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『草枕』読書感想

作品:草枕作者:夏目漱石投稿日:

「人の世をば、歌よみに与ふるなり」で始まる『草枕』は、写生と哲学の間をたゆたう旅の書だ。峠の温泉場で画工が見出すのは、人生の苦から距離をとる「非人情」の美学。しかし読んでいると、その非人情は冷淡さではなく、過剰な感情の渦から自分を救うための…

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『山椒大夫』紹介と感想:安寿が支える希望

作品:山椒大夫作者:森鴎外投稿日:

安寿の行動を追うと、自分の将来より厨子王の可能性を守ろうとする切実さが見えてくる。その姿に心を動かされながら、犠牲を当然の美徳として受け止めたくはないとも思った。そうした選択しか残されない状況の残酷さも、同時に読む必要がある。強い人物として称えるだけでなく、安…

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『それから』紹介と感想:平岡との友情にある負い目

作品:それから作者:夏目漱石投稿日:

代助と平岡の関係には、過去の選択が現在まで影を落としている。昔はそれで収まったと思ったことが、年月を経て別の意味を持ち始める。友情を守るためだったという説明も、いまの感情から見れば揺らぐ。人は一度決めた理由を同じ形で保てないのかもしれない。三人の関係を恋の競争…

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『地獄変』紹介と感想:見たものしか描けない願い

作品:地獄変作者:芥川龍之介投稿日:

実際に見たものを描こうとする姿勢は、芸術への誠実さのように聞こえる。しかし、見るために出来事を起こそうとすると、話は変わってくる。表現の確かさを求めることが、他者の苦痛へつながる境界があるからだ。制作上の要求という言葉で何を正当化できてしまうのか。良秀のこだわ…

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『銀河鉄道の夜』紹介と感想:カムパネルラとの距離

作品:銀河鉄道の夜作者:宮沢賢治投稿日:

ジョバンニは友とずっと一緒にいたいと願うが、隣にいる相手にも自分では届かない時間がある。近さを感じるほど、その距離が切なくなる。友情を互いのすべてを共有することとして描かず、わからない部分を残すところが印象的だった。同じ窓を見ていても同じことを考えているとは限…

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